家康公の史話と伝説とエピソードを訪ねて
美和地区方面
足久保(あしくぼ)茶
聖一国師(しょういちこくし)が静岡にお茶を伝えたという伝承のある足久保茶は、大御所家康公の御用茶として大切に保護されていた。お茶の御用を勤めた足久保の茶師たちは、代金として毎年千両千人扶持(ふち)をもらっていた。このため安倍と藁科の谷に産する茶は、足久保茶と呼ばれて遠く江戸にも問屋が設けられた銘柄で、直接江戸との取引が行われ利益を得ていた。ところがお茶を商う茶問屋が駿府城下町の茶町に置かれ、必ず駿府の茶問屋を経由しないと売買出来なくなった。つまり足久保茶商の特権が失われたわけで、元通り江戸と直取引をと訴訟が起こった。
足久保村ほか安倍郡65ヶ村は一致し駿府茶商を相手取り、茶一件として江戸の町奉行にまで訴訟を持ち込み、事件は幕末まで続けられたが有耶無耶に葬られたままで真相はわからずじまいとなって今日語りつがれている。お茶所静岡ならではの大事件であった。