家康公の史話と伝説とエピソードを訪ねて
麻機地区方面〔麻機は麻畑とも書く〕
麻畑御殿
麻畑村平山の奥に不動の滝があった。ここに家康公は御茶屋を建てたという(「駿国雑志」)。当時の御茶屋とは、将軍や大名が鷹狩りや巡察の際、宿舎や休憩を目的として設置されたもので、御茶屋守などを任命し管理させたものという。また御茶の水とは、将軍の飲用する茶を煎じるために用いた名水から呼ばれた(「国史大辞典」)。
麻畑沼の蓮根
龍爪山の麓に麻機沼(静岡市葵区)が広がっている。この沼は昔から多くの水鳥や水生昆虫、それに湿原植物の宝庫であるだけでなく、希少植物として知られる「ミズアオイ」が見られる。このミズアオイは葵の御紋に酷似している。沼地一帯には、昔から高価で有名な麻機蓮根が掘出される。この蓮根堀りは、胸近くまで泥水に浸って作業するため、とても大変な農作業である。
麻機蓮根は細身で、他所の地域の蓮根と比べて節々がはっきりとくびれて、またふっくらとしているのが特徴である。2つに折るとその液汁は納豆のように粘り気が強く、さらに糸を引くものが上質という。この上質な麻機蓮根には、昔からこんな話が伝わっている。
それは家康公の大御所時代の伝承である。漢方に精通していた家康公は、特に上質な麻機蓮根と山芋を1対1ですり潰し、それをご飯にかけて食べたという。いわゆる「とろろ飯」である。それだけでなく、甲斐の武田信玄縁の神社仏閣においてこの蓮根をすりおろした後に胡麻油であげるという調理法で、滋養強壮精力増進のために精進料理として食し続けたという。この話は静岡県立静岡高校の郷土研究部員が、土地の古老から聞き調査したものを更に葵区千代田の坂口忠能さんが記録したもので、以下、具体的な料理法が次の様に記されている。
□漢方を作るための食材として
- 麻機蓮根
- やまと芋(手いも)・・自然薯よりも強壮剤となる
- のばしスープ・・真昆布、鰹節(焼津産)で煮出した汁
- 味噌・・愛知のマスズカの赤味噌に京都の米麹白味噌を合わせたもの
- 三河の地鶏の卵・・牛の初乳と同質の成分が含まれる
- 「あいちのかおり」という米・・愛知県安城試験場岩槻博士により作種され、大粒で寿司に合う。安倍川水で育成されたもの
- 五穀(押麦・こきび・あわ・そば米・いりごま)を配合したもの
- 上足洗天然水